COLUMN
お役立ちコラム
2025/07/02
『新ZEH』施行で新たな「省エネ」定義制定~より効率的なエネルギー自家消費の実現へ~

経済産業省は2025年5月12日、「ZEHの定義見直し」に向けた新要件『新ZEH』基準案を公開しました。2050年の脱炭素・カーボンニュートラル目標達成を実現するためには、更なる省エネ化が進んだ住宅の普及が不可欠であるとし、2027年度施行を目指した新要件になります。2025年度から「GX志向型住宅」という上位性能の住宅定義が施行されている為、今の内から「現行のZEH基準」ではなく「GX志向型住宅」「新ZEH」基準を目指した住宅設計のニーズは今後高まっていくでしょう。今回のコラムでは新たな基準が予定されている『新ZEH』についてまとめていこうと思います。
「現行ZEH」と「新ZEH」の性能はどのくらい違う?

※「戸建て住宅」における性能比較

エコプラ君
まず一つ目のポイントとして、『新ZEH基準』では「断熱性能」は等級6(「6地域の場合でUA値0.46」)、「一次エネルギー消費量等級」は等級6(35%以上削減(BEI=0.65))と強化されているね。

エコプラ君
2つ目のポイントは大きな変更点。まだ検討事項ではあるけれど「蓄電池」や「HEMS」といった設備の搭載が基準達成の新たな要件に入る可能性があるね。
『新ZEH+』(新ゼッチプラス)は、新ZEHの基準値から更に「太陽光の搭載容量の強化」を求める予定に
「GX志向型住宅」との比較

※省エネ地域区分「6地域」で比較
「断熱性能(UA値)」や「一次エネ消費量削減率(BEI)」、「太陽光発電設備の搭載によるTOTALの削減率の基準値」は『新ZEH』と『GX志向型住宅』で比較すると同じであることが分かります。HEMSによる高度エネマネの採用という点も同じですね。その為、基本的には同じ建物仕様だと考えて良いと思いますが、一点だけ大きく違う点があります。それが『「蓄電池」搭載義務の有無』になります。『新ZEH』の場合は「蓄電池」の搭載が必須要件となる予定ですが、2025年度に施行されている『GX志向型住宅』は蓄電池が必須要件ではありません。
国土交通省は「性能等級」の上位等級の制定を検討中(一次エネ消費量削減率)

【参照】国土交通省:住宅性能表示制度の見直しについて
断熱性能向上・一次エネルギー削減のコツは?
現行ZEH基準から断熱性能や一次エネルギー削減率を強化しようと考えた時に断熱性能については「断熱材」の選択と玄関ドア・サッシの性能向上と、イメージはつきやすいと思いますが、一次エネルギー削減率の強化は意外とシビアです。そもそも現在の住宅設備は既に省エネ性能が高いため、20数%で現行ZEH基準をクリアしている仕様から35%以上の削減強化を図ろうとすると、様々な検討が必要になると思います。「GX志向型住宅」を例として「性能向上」にフォーカスしたコラムを掲載しておりますので、こちらのコラムを是非ご参考ください。

【GX志向型住宅とは?】基準や条件、BELS申請等のポイントを解説!
2024年補正予算にて、『子育てグリーン住宅支援事業(補助金)』が確定し、GX志向型住宅という新たなグレードが誕生しました。
外張付加断熱は必要?エアコンはどの品番を使えばいい?給湯器も限定される?等、気になるところが多々あるかと思います。
それらを中心に、GX志向型住宅達成、補助金取得のためのヒントをお伝えできればと思います。

【最新/新築最大160万円/補助金】子育てグリーン住宅支援事業とは?GX志向型住宅?申請方法とは?
2024年11月22日、「令和6年度補正予算案」の閣議決定により「子育てエコホーム支援事業」の後継事業として『子育てグリーン住宅支援事業』が報道発表されました。
新築+リフォームの総予算は2,250億円規模。長期優良住宅の補助金枠は、太陽光発電設備等を設置しなくても補助が受けられる、貴重な国の補助金枠です。
最新・ZEHより上位クラスのGX志向型住宅、2030年度義務基準の『ZEH水準』、長期優良住宅補助金枠、3つについて理解し、申請方法を学べる内容を書いていきます。
「HEMS」による高度エネマネや「蓄電池」の搭載が意味することとは?
現行ZEH基準からの追加要件となる見込みの『「HEMS」と「蓄電池」の設置』。経済産業省は、”省エネルギー性能の向上に加え、ゼロ・エネルギー化を進めていく観点から、戸建住宅については、自家消費に資する設備の設置を求める。”という発表をしており、太陽光発電による『創エネルギー』を、「蓄電池を搭載して発電した電気を貯めて使うこと」と「HEMSの導入で設備の統合制御を行い、より効率的に電力消費をすること」の2点を強化することによって更なる省エネ(ゼロエネ)化につなげていく方針が伺えますね。
今後の補助金施策にも影響があるかもしれません
今回紹介している「新ZEH」が当初の予定通り2027年度から施行されると鑑みると、2026年度の補助金事業から「HEMS」や「蓄電池」といった設備の搭載が補助金事業の条件に入ってくる可能性がありますね。あくまで予測の範囲を超えませんが、導入を促していくことが想定されるので、「補助金活用」と紐づけて先行した導入促進があってもおかしくはないでしょう。2026年度以降の補助金事業の条件にも要注目です。
まとめ
『新ZEH』の基準要件いかがでしたでしょうか?「断熱性能」や「設備の省エネ性能」の強化はもちろんですが、今後は「創ったエネルギーを貯めて、売電ではなく自家消費に促す」「HEMSによる電力制御によって省エネを効率化する」といった形で、『エネルギーの運用』を促進していくでしょう。スムーズに進めば2027年度から『新ZEH』基準が運用開始と考えるとあっという間ですよね。『太陽光発電システムと蓄電システム(蓄電池やV2Hなど)のセット運用』を本格的に考えるフェーズに入ってきたといっても過言ではない気がします。ECOPLUSでは省エネ性能計算や補助金事業についてまとめている他、取得のために必要な「省エネ計算(実務サポート)」や「BELS評価書」の取得サポ―トも実施しております。少しでも気になった方は(無料なので)まずはお気軽にご相談ください!
<参考資料>
経済産業省:『更なる省エネ・非化石転換・DRの促進 に向けた政策について』
国土交通省:『住宅性能表示制度の見直しについて』