COLUMN
お役立ちコラム
2024/11/25
【省エネ住宅】長期優良住宅取得は当たり前の時代へ!耐震性能や維持保全が重要な理由は?
『認定長期優良住宅』は平成21年に制度導入~令和5年度終了時点で認定実績は150万戸を超えました。令和5年度に新築された一戸建て住宅のうち、長期優良住宅認定取得率は31.3%と、4年連続で増加中であり、新築の約4件に1件は長期優良住宅となっています。「優遇措置を受けられる点」や「補助金事業への申請が可能な点」も大きなメリットですし、それらが“第三者評価によって認められていること”が何よりのキーポイントです。長期優良住宅についてのメリットや注意点についてまとめていこうと思います。
- 目次
-
- 1.長期優良住宅の認定基準
- 1-1.2022年10月より省エネ性能基準が改正(省エネ基準⇒ZEH基準へ)
- 2.長期優良住宅のメリット:税制優遇
- 2-1.住宅ローン控除
- 2-2.固定資産税額が1/2に減額される減税措置の適用期間が2年間延長
- 2-3.『フラット35』で金利優遇を受けられる
- 2-4.耐震等級による『地震保険』の割引が適用
- 3.長期優良住宅のメリット:補助金活用
- 3-1.子育てエコホーム支援事業
- 3-2.LCCM住宅(令和6年度サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)LCCM戸建住宅部門)
- 4.長期優良住宅のデメリット
- 4-1.申請に時間がかかる
- 4-2.建築費用が増える
- 4-3.完成後も維持コストがかかる
- 5.まとめ
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅に認定されるためには「技術的基準」がいくつかあり、それぞれをクリアする必要があります。詳しくはこちらのコラムを併せてご覧ください。
【解説/省エネ住宅】4年連続認定件数増加中!『認定長期優良住宅』とは?条件や基準は?
平成21年よりはじまった認定長期優良住宅。令和5年度終了時点で認定実績は150万戸を超えました。令和5年度末時点で新築の長期優良住宅認定取得率は31.3%になり、4年連続で増加中です。近年は特に注目が集まっている認定住宅ですが、一番の特徴はその名の通り、「長期に渡って優良」な住宅という点がポイントです。本コラムではどうすれば『長期優良住宅』と認定されるのかをまとめていきたいと思います。
2022年10月より省エネ性能基準が改正(省エネ基準⇒ZEH基準へ)
画像引用:YKKAP『省エネ上位等級の新設で、家づくりが変わる』 より
2022年10月から長期優良住宅含む「認定住宅」の断熱性能・一次エネルギー性能基準がZEH水準まで引き上げられました。2025年4月より、省エネ基準が適合義務となっておりますが、すぐ2030年からは『ZEH基準』が義務化予定に。長期優良住宅に限った話ではなく、今の内から最低でも『ZEH水準』以上の住宅性能に意識を持っていくことが重要だと思います。
長期優良住宅のメリット:税制優遇
住宅ローン控除
「住宅ローン控除」とは住宅ローンを借り入れして家を購入した場合、年末の残高の0.7%が所得税から控除される制度です。控除期間は13年間。「一般住宅(省エネ適合住宅)」と「長期優良住宅」とでは最大控除額に差があります。
・一般住宅では控除額は21~28万円/年(控除対象限度額は3,000~4,000万円)
・長期優良住宅なら控除額は31.5~35万円/年(控除対象限度額は4,500~5,000万円)
①年末のローン残高②控除限度額③各年の所得税+住民税 の一番低い額が控除額になる
「長期優良住宅なら必ず毎年最大で35万円の控除を受けられる。」というわけではない点に注意が必要です。
①年末のローン残高×0.7%
②長期優良住宅の減税措置最大 31.5~35万円(借入限度額4,500~5,000万円×0.7%)
③各年の所得税+住民税の合計額
①~③の金額を毎年計算し、その中で一番小さい額が毎年の控除額となります。
「住宅ローン減税」への大きな期待とは裏腹に、借入額の金額次第では、毎年の「控除額」にあまり大きな変化がないということも知っておくとよいでしょう。
参照:「住宅ローン減税(国土交通省HP)」
固定資産税額が1/2に減額される減税措置の適用期間が2年間延長
長期優良住宅の場合、軽減期間が5年に延長されます。固定資産税額は住む地域によって異なりますが、毎年課税される税金です。該当期間は半減(1/2)になるので、まずは課税金額や軽減額などは把握しておきたいポイントです。
【省エネ適合住宅(2025年義務化基準値の住宅)】
固定資産税評価額×1.4%÷2×3年間
※3年経過後は【評価額×1.4%】⇒1/2の軽減措置がなくなる
例:評価額1,500万円の建物の場合 1,500万円×1.4%÷2×3=31.5万円
【長期優良住宅】
固定資産税評価額×1.4%÷2×5年間
※5年経過後は【評価額×1.4%】⇒1/2の軽減措置がなくなる
例:評価額1,500万円の建物の場合 1,500万円×1.4%÷2×5=52.5万円
上記の例で計算シミュレーションをすると約21万円の控除になります。
※固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税通知書に同封されている課税明細書で確認できます。また、固定資産税評価額は3年ごとに見直しが入ります。「請負契約時の住宅部分に係った金額=評価額ではない」点に気を付けましょう。
『フラット35』で金利優遇を受けられる
『フラット35』とは、住宅金融支援機構と提携した民間の金融機関で利用できる長期固定金利の住宅ローンです。固定金利ローンなので金利上昇の恐れが無い事が良い点ですね。2022年10月以降は『ポイント制』にフラットの制度が改定されております。「長期優良住宅」を建てた場合取得できるポイントと、併せて世帯構成(若者夫婦世帯や同居する子供の数)や太陽光発電の有無(ZEH認定の有無)の最終的なポイント数によって金利優遇の割合や期間が確定します。詳しくはこちらのコラムもご参照ください。
【2024年版】フラット35(S) 適合証明書の取得方法 & 『つなぎ融資への提出』注意点をわかりやすく解説します。
変動型住宅ローンが借りられない建築主の方や、将来の金利上昇に備えて検討される方向けに、『フラット35』という固定金利ローンがございます。
フラット独自の技術基準や証明書取得があり、なかなかフラットを使わずどう取得していいかわからない、準備するのが大変そう、という方向けに、具体的な取得方法と注意点をお伝えしていきます。
耐震等級による『地震保険』の割引が適用
『耐震等級2~3』を取得することによって、地震保険料が『等級2で30%」「等級3で50%」割引となります。仮に35年間地震保険を継続するとなると、更新毎に割引が適用されるため、割引総額でみると大きな恩恵をうけることとなるでしょう。長期優良住宅の認定書があることで保険の割引が適用できます。詳細をこちらのコラムで紹介しておりますので、併せてご覧ください。
2025年4月施行!待ったなし!~法改正で変わる『耐震等級3』への意識~
近年のZEH化推進により、「太陽光発電設備」の設置や、断熱材・開口部の高性能化が進んでいる今、比例して固定荷重(建物自体が持つ重さ)が増加していることも忘れてはなりません。住宅の「省エネ化」は今後ますます加速していきます。それを危惧し、2025年4月より、『4号特例』が見直されて、耐震検討方法が改定します。「性能」と「耐震」のバランスがなぜ重要なのか。性能上げたいけれど耐震は...の時代ではなく、標準で「性能」や「耐震」のセットで考える事をお勧めします!
その他の税制優遇①(「不動産取得税」「保存登記」「移転登記」)
例:評価額1,500万円の新築の場合
【不動産取得税】
(1,500万円ー1,200万円)×3%=9万円
⇒長期優良住宅の場合 ※控除額3万円程お得
(1,500万円ー1,300万円)×3%=6万円
【登録免許税】
1,500万円×0.15%=2.25万円
⇒長期優良住宅の場合 ※控除額0.75万円程お得
1,500万円×0.1%=1.5万円
その他の税制優遇②(「贈与税の非課税限度額」)
父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、新築取得(や増改築等)時に、金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。その限度額が「長期優良住宅」の場合は1,000万円まで上乗せされます。(上乗せ措置の適用期限は令和8年12月31日まで)
仮に1,000万円の贈与を受けた場合
【一般住宅】限度額500万円・・・残り500万円が課税対象
500万円×30%=150万円
【長期優良住宅】限度額1000万円・・・課税対象“なし”に ※150万円程お得
長期優良住宅のメリット:補助金活用
子育てエコホーム支援事業
まずご紹介するのは「子育てエコホーム事業」です。最近始まった補助金制度の継続支援事業で「2022年こどもみらい支援事業」「2023年こどもエコ支援事業」「2024年子育てエコホーム支援事業」と続いており、2025年度までは同様の補助金事業が続くと見られています。今年度の『子育てエコホーム支援事業』は、令和6年12月31日をもって交付申請の受付が終了します。後継事業が発表されましたら改めて情報をまとめ、掲載予定です。
LCCM住宅(令和6年度サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)LCCM戸建住宅部門)
次に紹介するのは、現在低炭素社会へ向けた住宅性能でトップに位置付けられている「LCCM住宅」の補助事業です。こちらの住宅の耐震要件や住宅品質保証の要件に『長期優良住宅を取得している事』が選択要件の一つになっております。
最終目標?!脱炭素におけるLCCM住宅とは?性能や認定基準・補助金事業についてまとめました!
皆さんは「ZEH」ではなく「LCCM住宅」を聞いたことはあるでしょうか?LCCMは『ライフ(L)サイクル(C)カーボン(C)マイナス(M)住宅』の頭文字を取った略称です。今回のコラムでは次世代住宅である『LCCM住宅』にフォーカスし、そもそもLCCM住宅とはどんな家?ライフサイクルカーボンマイナス?ZEHよりすごい家?などの観点からできる限り分かりやすくまとめていこうと思います。エコな次世代住宅をお考えの方、必見です。
【R6年度/新築最大140万円/補助金】低炭素に向けた住宅の最高峰!LCCM住宅の補助金について(交付申請 編)
低炭素社会に向けた住宅における最終目標として位置付けられているのが『LCCM住宅』であり、省エネ性能で差別化を図りたいと考えている方はLCCM住宅に取り組むのは今が良いタイミングではないでしょうか。2050年カーボンニュートラルを実現させるために、CO2排出量を最小化できるLCCM住宅については、国が補助金制度を用意しています。私自身が補助金申請に携わった実経験をもとに、対象条件や注意点などをまとめてまいります。
長期優良住宅のデメリット
申請に時間がかかる
『長期優良住宅』は認定基準をクリアする必要があると述べましたが、その手続き(認定申請)は「工事着工」の前に必ず執り行う必要があります。この点は、新築の場合は特に注意が必要です。一般住宅と比べ、工事日程の調整が必要な点はデメリットといえるでしょう。ハウスメーカーや工務店などによってばらつきはありますが、設計や申請等で数週間から1か月強の時間が余分にかかるのではないかと思います。契約から工期に余裕を持って計画を進めることがポイントです。
建築費用が増える
ハウスメーカーや工務店、設計事務所などを通じて申請を行うときには、認定のための手数料と作業料等で数十万円程度が余分にかかります。これは建物プランや会社によって違いますので費用感の確認は必要です。また、建物自体のコストも『長期優良住宅』基準にする以上、必然的に上がります。(耐震強化・高性能設備を導入する為。)一見すると大きなデメリットと見えがちですが、「仕様を良くすれば建築コストが上がる」のは当然のことですし、その分、長期に渡り優良な住宅です。単純にデメリットと考える必要はないと思います。コスト増幅はお財布と相談ですね。コストアップ分を補助金で賄うなど、賢く補助金も活用できると尚いいですね!
完成後も維持コストがかかる
『長期優良住宅』は完成した後、住み始めてからの定期点検が必要です。5年や10年といった周期で、自治体から定期点検のお知らせが届きます。施工業者に依頼することもできますし、第三者に点検を依頼することも可能です。この点検を怠っていると最悪の場合、罰金や『長期優良住宅」』の認定取り消し、補助金の返還などに発展します。『長期優良住宅』に限った話ではありませんが、「良い状態を維持するためのメンテナンス」は何よりも大切ですよね。メンテナンスを行ってこそ、長期に渡って快適に過ごし続けられるというわけです。メンテナンス費がかかるのはデメリットではありますが、長期にわたり、頼れる工務店様からのメンテナンスを受けてもらえる裏付けにもなりますので、建てて終わりではなく、継続的にお施主様とつながることでちょっとしたことやリフォームのご相談など、良好な関係性を築いていけるのではないでしょうか。
まとめ
『長期優良住宅』のメリット・デメリットについていかがでしたでしょうか?税制や住宅ローン、申請コストに建築コスト等々、生活に欠かせない「お金」の増減は気になる方も多いと思います。ただ、一般基準以上の性能をクリアし、なおかつ維持管理能力を持った『長期優良住宅』は、”国から認められた優れた家”であることに間違いはないですし、生活のランニングコストをはじめ、長期的な視野で得られるメリットを見据えたうえで、総合的に「長期優良住宅の認定」を受けるか受けないか、判断していただく事が最適かと思います。今後は中古リノベーションはじめ、“建てて劣化したら壊す”から“建てて維持管理をして長期にわたって住み続けられる”へ、世の中がストック重視の考えに変わっていくでしょう。高性能住宅が増えれば増えるほど、比例して、その家が新築からいつまで高性能品質(結露・劣化・耐震強度等)を保てるのかがどんどん重要になっていきます。
弊社では「長期優良住宅」「LCCM補助金」「住宅補助金施策」など、それぞれ取得申請サポートも承っております。是非、一度ご相談やお見積りなど、お気軽にお問い合わせください!